やさしい税務会計ニュース
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文書作成日:2019/09/17
業務災害休業期間を有給とした場合の所得税の取扱い

[相談]

 当社では、業務災害により従業員が休業している期間については無給とし、労働基準法による補償を行う旨(実際の給付は労災保険から行います)を就業規則に定めています。
 しかし、労災保険による給付は給与の全額ではないことや、人材採用が困難な現状において従業員の長期定着を図るといった観点から、業務災害による休業期間中については従業員に特別休暇を与え、その特別休暇期間中の給与については、会社から通常通りの給与を支払うように就業規則の変更を行うことを現在検討しています。
 そこでお聞きしたいのですが、仮に、上記のように就業規則を変更して業務災害休業中の従業員に給与を支払った場合、その給与に所得税は課税されるのでしょうか。


[回答]

 ご相談の特別休暇期間中に支払う通常の給与については、所得税の課税対象となるものと考えられます。


[解説]

1. 労働基準法上の災害補償とは

 労働基準法では、労働者(従業員)が業務上の負傷又は疾病により、その療養のため、「労働することができないために賃金を受けない場合」に、使用者(企業)に対して労働者への補償責任が定められています。
 その補償の種類は療養補償・休業補償などで、補償額は労働者の平均賃金(疾病が確定した日の直前の3ヶ月間に労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の日数によって除して算出した額)を基礎として算定されます。


2. 労働基準法上の災害補償と労災保険の関係

 上記1.の使用者の災害補償責任の履行を確保するために、労働基準法とともに制定されたのが、労働者災害補償保険法(労災保険法)です。この労災保険法に基づいて給付が行われる場合には、使用者は労働基準法上の災害補償責任を免れることとされています。
 この仕組みにより、労働者への療養補償・休業補償等は、実質的に保険者である政府が肩代わりすることとなっています。
 なお、賃金の補償にあたる「休業補償給付」については、休業期間の4日目から「休業補償給付」と「休業特別支給金」を合わせ、平均賃金の80%が支給されることとなっています。


3. 業務災害休業期間中の賃金を通常通り支給するとした場合の、所得税の課税関係

 所得税法では、労働基準法の規定によって受ける災害補償については、所得税を課税しないことが定められています。
 しかし、今回のご相談の場合のように、就業規則によって業務上の負傷又は疾病による休暇期間を有給休暇として通常どおりの給与の支払をする旨を定め、その規則に基づいて支払われる給与については、労働基準法上の災害補償の要件である「労働することができないために賃金を受けない場合」には該当しないことから、労働基準法上の災害補償には該当しないものと考えられます。
 したがって、業務災害休業期間中に取得した特別休暇期間中に通常どおりの給与を支払った場合には、その給与については、通常の有給休暇取得時に支払われる給与と同様に、所得税の課税対象となるものと考えられます。


 働き方改革法の制定に伴い、従業員がより安心して長期的に働ける職場環境づくりを意識する企業が増えています。今回のご相談のような特別休暇制度の導入もその一つですが、制度導入にあたっては、今回の相談事例のように税制面からの検討も必要となりますので、顧問社労士だけでなく、ぜひ当事務所にもご相談いただくことをおすすめいたします。


[参考]
 所法9、28、所令20、国税庁所得税相談事例、労働基準法12、76、84、労働者災害補償保険法14、労働者災害補償保険特別支給金支給規則3など


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